これは、大元帝国がおこなった政策の現われだ
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ウンは、このことをよく理解していたので、なんの疑問も持たなかった。
市街のなかの大きな通りから外れた何の変哲もない民家へと入っていった。
中庭を挟んで二棟の家屋が並んで建つ、その右側の部屋へ・・・部屋の設えからそこは、書斎の
ようだった。
ここまでの間、脱脱は、ずっと沈黙したままだったので、ウンもそれに従い黙っていた。
客用だろうか、部屋の両側に並んだ椅子の一つにウンは、座った。
「お前が、譚龍の間者か。」
タルタルは、なんの前置きもなくいきなりウンにそう言い放った。
ウンは、すこしだけ面喰らったが、正直に答える
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「いいえ。俺が、あの噂の・・・風功使いだからですか。」
「そうだ。そう考えるのが自然であろう。」
「将軍。そうだとしたら・・・どうなさるお積もりですか。」
一瞬なにかを躊躇ったような表情になったタルタルだったが、気を取り直したように穏やかな顔に戻り、まるで自分の子に話すように語りだした。
「お前は、俺がなにも危害を加えない確信をもっておった。どうもせぬのをわかっておるな。
ここが、誰の家かも知っておるのであろうな・・・。なぜ・・・高麗に渡った。」
「ここは、集賢殿大学士であられた呉直方殿の子息呉莱殿の、将軍の師匠の息子の・・・。」
「そうだ、皆亡くなってしまわれた。もうすぐ俺も・・・あちらへ参る。」
「クビライ帝の密史を捜し出したのは・・・将軍。クム様が・・・なにか残されて・・。」
「そうだ。残して下さった。まったく・・・。」
「この度の・・・討伐には、出向くなと・・・。」
「お前は、何者だ。」
穏やかだった、タルタルの表情が一瞬強ばった。
「譚龍総帥の息子です。」
ウンのその言葉にタルタルは、大きな声で笑っていた。
「クム殿はな、宿命は変えられぬが、運命は変えられる・・・俺にまだ死ぬな。まだ、国のため
に働け・・・そう書かれておった。だが・・・俺は、これでよい。」
そうだ、これでいい。・・・タルタルは、皇帝自ら政務を行うことを、ずっと願ってきた。
そのために、自分の叔父ですら排除してきたと、いっても過言ではない。
これでよい。・・・ウンは、将軍の心を見たような気がした。
愚かだと、愚かな主君だと・・・わかっていても仕えるのが、朱子学の教え。
それを貫こうと・・・。
「四書五経」を学んだウンに父は、こう言った。
朱子学は、下克上をさせぬように、なされた学問だ。
これを貫けば・・・自ら死に向かう者が出てくる。
そういう者が誠の賢臣・・・。
「お前・・・ユ・ウンスと申したな。あの天界の医員と同じ名だな。お前も・・・宿命を背負って産まれてきたのだな・・・。しかし・・・あの医員がこれほど詳しいことを、知っておったとは・・・どうしても思えぬ。」
「将軍。俺は・・・背負っておりません。自分で選んだのです。だから、高麗に渡りました。
それと・・・ウンス様は、そこまで詳しくは、御存知ありませんでした。
俺が、いえるのは、ここまでです。」
「では、チェヨン殿に高郵で会おうと伝えておいてくれ。」
そう言ってタルタルは、部屋を去って行った。
ウンは、その背中に別れを感じた。
1. 無題
これは犯罪です。