流してくれ、考えずにペンを走らせるって、そんなことできっこないと思った。
クラスメイトは忠実に何かを書いている。
私はその女教師が心理学をかじっていて、生徒に実験しようと思っているのではないかと疑った。
案の定、次の授業のときは、箱庭療法のセットを持ってきて生徒にやらせた。
次の日は画用紙を配って、頭の中にある思いを絵にせよと言った。
私は反抗して何もしなかった。
目的もその効果も何も説明せず、生徒を実験材料にしていることは私だけには見え見えだった。
みんなは少しも疑うことなく、黙々と従っていた。
私は先生の底意をみんなの前でぶちまけてやりたかったけれど、英語力が不足していたうえ、感情的になると、
理論が飛ぶ欠点があったので、ただ睨んで過ぎただけだった。
大人になって、中年の知人の女性が私に、
「内緒よ、絶対に人に言わないでね」
と念を押しながら、子供の自慢をした。